Brancusi Carving the Essence
彫刻家ブランクーシ(1876-1957)の展覧会に行った。私は1985年に、彼の生家のあるルーマニアのホビタ村を訪れたことがあり、彼の生活が木を素材にした素朴な造形で囲まれていたことを知った。なので、今回は磨かれたブロンズ作品を中心に鑑賞してみたいと思った。なぜなら素朴さと洗練の間を行き来してみたかったから。
ブランクーシと犬のポレール
「レダ」は白鳥。レコード盤のような台に乗った光るブロンズ作品の水鳥は、回ると景色をとりこみ、光を発するだろうと想像する。意外に大きい。
同じく円盤に乗った「魚」。くるくる回ると音が聴こえてきそう。ブランクーシは魚をイメージした時、形やウロコなどの細部より先に泳ぐ姿を思い浮かべるという。川の流れ、川面にきらめく光と共に。
これらの鳥は離陸の角度を見せている。空を見上げ飛翔する瞬間を待つ。一方でブロンズの質量を持った鳥は、飛べそうに思えない。眼で像を追っていると浮かんだ姿が見えた。磨かれた姿は、時に透明になった。
パリのアトリエは、彼の作業場であると同時に展示場でもあった。時代を越えた作品が素材と共に彼と過ごした時間のなんと幸福なことだろう。
今回の展示でこのアトリエをテーマにした展示室の照明が素晴らしかった。内覧会だったので、運良くライティング・アーキテクトの豊久将三さんと出会い、今回の照明の新しさについて話をうかがった。(私とも2度仕事をさせていただいている)
正面から見るとブロンズ群はまったくフラットな光にとり囲まれていて、重量を失い空中に浮かんでいるようだ。後ろにまわり見ていくと、ブロンズ群は影と共に着地している。「飛翔」と「神秘」この二つの像を見せる磨かれたブロンズ作品こそ、彼が求めていた本質を飛翔させる方法ではないかと思った。
山本容子
ルカとポレールのぬいぐるみ。MUSEUM SHOPで買った。